信州.八ケ岳山麓に位置する清里高原や野辺山高原は、シーズンともなると行楽客でにぎわう人気コースです。

じつはこのあたり、JRが走る路線のなかで、もっとも標高が高い場所でもあります。

JRの最高地点は、JR小海線の清里駅と野辺山駅の中間あたりで、海抜1735メートル。

平成元年には高さ6メートルもある木製の標柱が立てられたので、高原にやって来たハイキング客もよく訪れる、観光名所のひとつとなっています。

そしてこの最高地点を東側に進むと見えてくるのが野辺山駅で、ここがJRでもっとも高い所にある駅になります。

野辺山駅は昭和58年に改築され、現在は教会風のメルヘンチックなデザインの駅舎になっています。

高さは海抜1345.67メートルで、ホームには最高所であることを示す白い標柱が立っています。

JRでもっとも高い駅の海抜が野辺山駅の1345.67メートルだとすると、大手私鉄駅の最高所の海抜はぐんと低くなって、南海電鉄の高野山駅の海抜867メートルです。

和歌山県の高野山上にあり、極楽橋駅からケーブルカーで上がる。

この国のコンドル駅が、海抜4786メートルで世界最高所の駅の座に輝いています。

なんと、富士山頂よりも高い所にあるわけです。

東西南北それぞれの果てにある駅日本でいちばんというのは、なぜか人の征服欲をそそるもののようです。

日本でいちばんをうたったことで、全国から観光客がどっと来たという話はよく聞く。

こうした事情はJRの駅にしても同じようで、日本でもっとも東西南北に位置する駅は、そのこと自体がひとつの売りとなっています。

では、どの駅が日本でもっとも東西南北に位置するのかというと、北と西は簡単に答えが出るが、南と東に関しては、明快な答えが出しにくいです。

地図を見ればひと目でわかるように、日本の最北端は宗谷本線の稚内駅で、これは北緯45度25分の位置にあります。

最西端は佐世保線の佐世保駅で、東経129度43分です。

では最南端はどこかだが、最南端の駅をうたっている駅は、じつはふたつあります。

西大山駅の位置は北緯31度H分、山川駅の位置は北緯31度12分だから、最南端は文句なく西大山駅のはずです。

実際、西大山駅のホームには、日本最南端を示す標柱が立っています。

駅員のいる駅といない駅では、駅側のPRにかける勢いもちがうし、観光面でも何かと便利。

駅前も、山川駅のほうが活気があります。

最東端の駅も、事情は最南端と同じです。

地図上で最東端の駅は、東経145度36分にある根室本線の東根室で、ホームにもちゃんと標柱が立っています。

ところが、やはりここにも駅員がいません。

そこで隣駅にあり、根室線の終着点である東経145度35分の根室駅が最東端として名乗り出てくることになります。

日本一争いでは何かともめることが多いが、駅の場合も同じなのか。

それとも、相手は無人駅だから、もめることもないのでしょうか。

地下にホームがある駅では、改札からホームまで予想以上に距離があることも少なくないのです。

JR上越線にある土合駅は、まさにこうした駅の代表で、改札からホームまでの距離は、なんと歩いて10分以上もかかる。

水上駅と越後湯沢の間にあるこの駅は、下り列車専用ホームのみ、駅舎からはるか離れた所にあります。

土合駅はもともと三国山脈を貫通してつくられた清水トンネルの入り口にある駅で、上越線がまだ単線だった時代には、ホームはちゃんと駅舎のなかにあったのです。

それが複線化にともなってホームを増やすことになり、新しく新清水トンネルを掘ることになったのだが、その場所が清水トンネルのはるか下だったのです。

その結果、土合駅では、上り列車は清水トンネルに作られたホームに止まり、下り列車は新清水トンネルに作られたホームに止まるということになったのです。

改札は清水トンネルの所にあるから、下り列車に乗ろうと思ったら、改札をくぐったあと、さらにはるか下まで降りなければならないというわけです。

ふたつのホームは階段で結ばれているが、その数は486段、歩いて約10分かかる距離です。

これがウソ偽りでないことは、当のJRも認めています。

土樽土合水上越後湯沢伊勢崎小出改札を通ったあと、長い階段を使ってホームまで行かなければならない駅はほかにもあります。

筒石駅は、むかしは地上に駅舎もホームもあったのです。

ところが、これも複線化にともない新しいホームが必要になり、上り下り両方とも、山中に掘ったトンネル内に設けられることになったのです。

上りが280段、下りが290段、いずれにしても、ゆうに5分はかかる。