新幹線や飛行機で目的地にサッと行くのもいいが、鈍行列車の旅も捨てがたいという人は意外に多い。

しかしいっぽうで、特急や急行に押され、長距離を走る鈍行列車はどんどん姿を消しつつあります。

そんななか、現在、昼間もっとも長い距離を走る鈍行列車は、JR山陽本線を走っています。

下関を5時33分に出発する岡山行きの普通列車がそれで、営業キロは363.3キロ、72の駅に止まりながら6時間55分かけて走り、岡山には12時28分に到着します。

鈍行列車は、ダイヤの関係で途中の駅で何分も停車することは珍しくないが、この列車では小郡駅で33分、徳山駅で7分の待ち時間があります。

この間、列車から降りて、新鮮な空気を吸ったり、改札を出て駅前の風景を楽しむことだってできる。

乗り換えがないから、バタバタすることもないのです。

以下、昼間走っているJRの長距離普通列車を、長い順に4本挙げておこう。

標高がほぼ同じA駅とB駅を同一の列車が走る場合、A駅←B駅までの所要時間と、B駅←A駅までの所要時間は、ほぼ同じはずです。

ところが、これが微妙にちがうケースがあります。

関門トンネルをはさんだ、下関駅と門司駅の場合がそれです。

鯛全長3600メートルという、当時としては世界初の海峡間に掘られたトンネル社だったが、上り列車のほうが通過時間が長いのは、どうやらこの関門トンネルの傾斜に理由があるようなのです。

関門トンネルをくぐる山陽本線は、もちろん複線なのだが、上り線と下り線は、それぞれ独立したトンネルを持っています。

どちらのトンネルも、関門海峡のもっとも深い部分に向かってこう配を下り、そこからふたたび地上に向かってこう配を上っていくのだが、じつは上り線と下り線では、上り線のほうがより深い所を通っています。

つまり、その分だけ上り線は傾斜がきつくなるわけで、これが上り列車のほうがトンネルの通過におよそ1分間、よけいに時間がかかる大きな理由と推測されるのです。

昴懐かしのローカル客車列車が今も走っている路線発車のベルが鳴ると、列車はスーッと軽やかに動きはじめます。

いま、こんな発車の感覚は当たり前すぎてわざわざ言うほどのものではないが、ひとむかしまえはちがったのです。

発車のベルが鳴ると、列車はガタッと揺れ、モソモソと動き出す。

飛び乗ろうと思えば飛び乗れるくらい鈍重なスタートです。

なぜむかしの列車が鈍重なスタートしか切れなかったかというと、機関車に引っ張ってもらっていたからです。

こうした自分では走れない列車が客車列車。

1章で述べた列車番号でいうと、M電車もD気動車もついていない、数字だけの番号の列車です。

かっては、機関車に引っ張られて走る客車列車の姿を、よく見かけたものだが、最近はほとんどが電車か気動車になり、その姿を見ることはきわめて少なくなってしまったのです。

電車や気動車に比べて性能的に劣るし、客車にはつねに牽引車が必要なためです。

この客車列車、特急や急行には少し残っているが、ローカル線の普通列車としてはわずかしか残っていません。

停車駅の多い普通列車では、客車のデメリットがより大きくあらわれてしまうからです。

青森と函館を結ぶ津軽海峡線の快速〈海峡〉にも客車が使われているが、いま挙げた普通列車とは少し性格が異なるため、基本的には3つの路線しかないといえるでしょう。

日本のむかしを伝えるローカル客車列車は、本数にしても数えるほど。

ここでは、久大本線の全列車を挙げておこう。

たとえば、寝台料金がもっとも安いB寝台客車三段式でひとり5250円。

以下、順々にランクが上がって、A寝台の客車二段式の下段でひとり1万500円。

A寝台個室では、ツインDXがひとり1万3350円。

もっとも高いスイートでひとり2万5490円というのが、これまでのランキングです。

ところが、最近、JR東日本が導入した寝台車両には、おひとり様なんと3万3640円という高額の寝台料金をとる個室が登場。

バブルが去った世間をアッといわせています。

なにしろ、このデラックススリーパー車両は、ふたり用個室がわずか3つあるだけの、1両の定員が6人という超豪華寝台車両。

エクセレントスイートは、その3室のなかでももっとも豪華仕様の部屋なのです。

従来までの寝台個室はシャワーがせいぜいだったが、このエクセレントスイートでは、ちゃんと入浴できてしまえるのです。

で、この3両がすべて連結されているのが、新宿発16時10分、新得着12時5分の寝台特急〈北斗星トマムサホロ〉運転日注意。

ダイニングカーでフランス料理を食べ、ラウンジでブランデーでも飲めば、まあ15万円くらいは必要でしょうか。

もっとも、東京の一流ホテルのスイートルームに泊まり、ホテル内で食事もすれば、そのくらいはかかるもの。

地方の旅だと、紅葉や渓谷、山並みの美しさが、次々と目のなかに飛び込んできて、時間を忘れるほどだが、JRでは最近、展望車付きの列車が続々登場し、そんな鉄道旅行の楽しみをさらにアップさせてくれています。

この展望車には、さまざまなタイプがあります。

運転室の背面のガラスを大きくすることで、客室から進行方向の景色を眺められるようにしたものや、運転席を2階にもってくることで、客席から前面の風景をガラス越しで見られるものなど、いずれもふつうの車両では味わえない景色が楽しめます。

ここでは、そんな車内が展望構造になっている電車を紹介しましょう。

流線形をした前面の部分に窓がついていて、そこからガラス越しに前方の景色を見ることができるのです。

自由席の場合は、いい席から埋まっていくから、始発駅まで行き、早めに並んでおいたほうが確実です。

〈小田急ロマンスカー〉伊豆急行〈リゾート踊り子〉名鉄〈パノラマカー〉近鉄〈伊勢志摩ライナー〉北近畿タンゴ鉄道〈タンゴエクスプローラー〉智頭急行〈スーパーはくと〉これらの列車にも、座席指定ではなく自由席のものもあります。

早めに並べば、特等席から列車の旅を楽しむチャンスが待っています。

そんななか、古きよき時代の面影を残した列車に出合うと、不思議にうれしい気分になるものです。

JR五能線の五所川原駅から出ている、総距離わずか207キロというミニローカル線です。

しかし、この津軽鉄道、知る人ぞ知るユニークなローカル線なのです。

毎年12月1日から3月1日まで津軽鉄道ではストーブ列車が走り、これがこの線の名物となっています。

ストーブ列車の車内には、むかし懐かしいダルマストーブがあります。

屋根には煙突がついていて、ここからもくもくと煙が上がっているから、遠くからでもひと目でそれとわかります。

ストーブ列車を引っ張るのはディーゼル機関車、客車の内部が木製のエス塗りというところも、懐かしさを感じさせてくれます。

なにしろ昭和30年前後に作られた客車をいまも現役で使っているのだから、オールドファンには涙ものでしょう。

ストーブ列車の運行時刻は、時刻表に太字や斜線で表示されているので、何時に乗ればいいのかすぐにわかります。

ちなみにこの津軽鉄道では、夏には風鈴を吊るした風鈴列車、秋には鈴虫を乗せた鈴虫列車が走っています。

文豪太宰治を生んだ国土には、むかし懐かしい香りがいっぱいに漂っているのです。

子供室や授乳室を備えたお母さん安心の列車がある最近のコンサートホールや映画館には、託児室を設けているところが増えています。

首都圏と伊豆急下田を結ぶJRの特急〈スーパービュー踊り子〉がそれです。

〈スーパービュー踊り子〉は1、2、10号車が2階建てになっているが、一般車両である1号車の1階部分が、子ども室になっています。

ちなみにグリーン車両である1号車の1階部分はサロン室、2号車の1階部分は4入用個室です。

子ども室はフリースペースになっているから、狭い指定席に座っているよりも、子どもたちはのびのびできる。

お父さん、お母さんたちにすれば、子どもが騒いでほかの乗客に迷惑をかける心配がないから大助かり。

授乳室もあるので、赤ちゃんに授乳するときも人目を気にせずにすむ。

このほか子連れ客に配慮した設備としては、最近の新型車両のなかに、乳児用のД轟。

しかし子ども室までついた列車は、残念ながらまだ〈スーパービュー踊り子〉だけです。

子ども連れの乗客に対する配慮は、ヨーロッパのほうが行き届いています。

このあたりはさすが福祉先進国といったところか。

またドイツには保母さんのいる保育室がついている列車があり、親はここに子どもを預けておくこともできるといいます。

少子化が問題となっているいまの日本で、子連れの人がもっと気軽に乗れるような列車を増やせば、少子化に歯止めがかかるかもしれないのです。

地元の人もビックリ仰天?日曜日には列車が来なくなる駅があるってホントq¨ふつう鉄道に休みはないが、貨物相手の鉄道となると話はちがってきます。

貨物専業の鉄道のなかには、平日は運行するけれども、休日は休みというものもあります。

休日は利用客である工場が休みになるため、運ぶ荷物がなくなってしまうからです。

ところが乗客を乗せる列車でありながら、休日を休みにしている鉄道もあります。

和歌山県の有田鉄道です。

JR紀勢本線の藤並駅から出ている小さな私鉄です。

鉄道といっても営業キロはわずか5.6キロで、始発から終点の金屋口まで13分しかかからないのです。

平日は、通学の高校生が乗ることもあって5往復しているが、利用客が激減する休日は運休しているのです。

休日に移動したい人は、同じく有田鉄道が運行しているバスを使う。

このことは時刻表にもちゃんと書かれています。

会社線のページを見ると、有田鉄道の運行表の欄外には、全便休日はバスのみ運行とあります。

そもそもこの鉄道、地元の名産品であるみかんを輸送するために作られた鉄道です。

ちなみに、毎週定休日がある鉄道は、ほかにもあります。

観光客相手の鉄道で、たとえば嵯峨野観光鉄道もそのひとつです。

トロッコ列車で有名なこの鉄道は、観光シーズンをのぞいて水曜日が休みになります。