時刻表の駅名の左に表示されている営業キロ。

これは、JRにとって運賃計算のもとになるきわめて重要な数字だが、じつは時刻表にはこの営業キロが掲載されていない駅があります。

たとえば、常磐線の偕楽園駅です。

これは、臨時乗降場や臨時駅と呼ばれる駅で、偕楽園駅は、1〜3月の梅が咲くシーズンしか利用できない駅なのです。

もっとも、これだけでは、営業キロが表示されない理由にはならないのです。

では、なぜ、偕楽園駅には営業キロがないのか?

考えられるのは、偕楽園駅には下り線にしかホームがないという理由です。

つまり、この駅は、東京方面から梅を見にやってくるときは使えるが、東京へ帰るときは使えない帰りは隣の水戸駅を利用するしかないのです。

つまり、駅としては不完全だから、営業キロがないということなのでしょう。

もっとも、JR東日本としては、東京方面から偕楽園に梅見物にやってきた人へのサービスとして、わざわざ偕楽園に停車している、ということなのかもしれないが。

営業キロがない駅は、じつはもうひとつあります。

JR四国の牟岐線にある田井ノ浜駅がそれです。

ちなみに、営業キロのない駅は、ひとつ先の駅までの営業キロで運賃を計算することになっています。

しかし、よくよく見てみると、ちょっとごまかされているような気がしないでもないこともあります。

たとえば、新幹線の営業キロのことです。

これは新幹線のほうが、スピードを速くするために、東海道本線よりもこう配やカーブの少ないルートを選んで、線路が敷かれているからです。

また、停車する駅の数が少ないため、よけいな回り道をする必要がないということもあります。

そのため、同じ東京からたとえば京都へ行くにしても、実際の走行距離は両者ではかなり異なります。

東海道本線を走ると513.6キロだが、東海道新幹線では476.3キロしかないのです。

JRが運賃を計算するために使っている営業キロは、基本的には線路を実測した長さです。

では当然、東海道新幹線の東京ー京都間の運賃は476.3キロに対して計算されているかというと、そうではないのです。

時刻表のピンクのページにある、新幹線の運賃早見表を見ると、東京ー京都間の営業キロは、513.6キロと書かれています。

当然この距離で計算されているから、運賃も東海道本線と同じ7980円です。

本来の距離数476.3キロなら、運賃は7350円ですむはずだが、東海道本線の営業キロに合わされてしまったため、利用者は530円もよけいに払わなければならなくなっているわけです。

このように営業キロと実際のキロ数とがちがうのは、東海道新幹線に限らないのです。

山陽、東北、上越、長野など、その他の新幹線でも同じです。

時刻表で調べると、たとえば東京ー博多間は、実際の距離が1069.1キロなのに対し、営業キロは1175。

9キロ、東京ー盛岡間は実際の距離496.5キロに対し、営業キロ5353キロ、東京ー新潟間は実際の距離300.8キロに対し、営業キロ3339キロといった具合です。

このように新幹線の営業キロが、実際の距離ではなく、在来線の距離に準じているのは、新幹線の開業目的と関係しています。

日本に初めて新幹線が登場したのは1964年の東京ー新大阪間だが、在来の東海道本線の輸送力を増やすための複線として新幹線を開通させたという目的もあったのです。

そのため、在来線と同じ営業キロを用いるようになったのです。

そしてその後生まれた山陽、東北、上越、長野行新幹線などにも、同じ計算法が適用されることになったのです。

ちなみにこの営業キロ、京都や博多のように在来線にも同じ駅がある場合はまだいいとして、新横浜や新大阪のように在来線にはない駅の場合はどうなるのか。

在来線に同じ名前の駅がない場合、その新幹線の営業キロは、近くの駅に準拠することになっています。

在来線に同じ名前のない駅と、営業キロを準拠する駅は以下のとおりです。

いずれにせよ、東北新幹線の東京ー大宮間や上越新幹線の東京ー高崎間のような一部の例外をのぞけば、たいてい実際の距離数のほうが短い。

なんだかJRにごまかされているような気もしないではないが、まあ、ここは目をつぶるしかないか。