日本の最南端と最北端の駅を最も早く移動する方法日本列島は北から南まで鉄道で埋めつくされているが、JRで日本の最南端の駅は指宿枕崎線の西大山、最北端の駅は宗谷本線の稚内です。

ではJRを使って、最南端駅の西大山から、最北端駅の稚内にもっとも早く行くにはどうしたらいいか。

この問いに答えるには、とにかく時刻表を何度も丹念に調べ、考えるしかないが、1972年、この問題にチャレンジしたのが、当時新聞記者で、現在はレイルウエーライターの種村直樹氏。

さて、彼は、どういうルートをたどったのか?

西大山を出発するのは19時42分、そこから西鹿児島まで在来線で進み、西鹿児島から岡山まで特急〈月光2号〉に乗車、月光2号内で日付は翌日へと変わる。

岡山からは新幹線〈ひかり4号〉で東京へ。

東京から上野はもちろん山手線で移動。

上野からは特急〈はっかり3号〉で青森へ行き、青森からは〈青函連絡船1便〉で函館へ向かい、ここでまた日付が変わる。

このルートを見つけた種村さんは、じつは90年にも、この最南端から最北端へ最短時間で進むという問題に挑戦しています。

このときは、朝8時42分に西大山を出発し、稚内到着は、翌日の17時26分。

所要時間は32時間44分で、18年の間に特急網がどんどん発達、青函トンネルも開通し、12時間以上も短縮できるようになったのです。

さて、現在はどうか。

72年のときと比べると、26年間で15時間もの時間短縮が可能になったわけです。

ちなみにこのルートは、運賃計算キロ3197.5キロで、普通乗車券は2万8980円。

いまは日本列島の南北を飛行機でひとつ飛びという時代だが、たまにはこんな頭を使ったぜいたくな旅もいいでしょう。

時×分新宿発の〈特急あずさ〉に乗って、松本で大糸線に乗り換え……と、時刻表をめくりながらの想像の旅は、ハマると徹夜してしまうほど楽しいもの。

こうした時刻表マニアのなかには、いわゆる一筆書きキップを作って机上の旅を楽しんでいる人もいます。

一筆書きキップは、あくまでも片道キップだから、同じ線路を通ることは許されないのです。

これは、想像以上に難しい作業です。

日本中の鉄道網が頭に入っていなければならないし、また、駅間の営業キロ数もいちいち時刻表に当たらなければならないからです。

たとえば、北は北海道から南は九州まで、一筆書きで行くコースは、その組み合わせを考えると、ほとんど無限といっていいほどあるが、そのなかでどのコースがもっとも距離が長いかを調べるとなると、これはもう想像を絶する手間がかかるのがおわかりでしょう。

というわけで、ここでは1997年5月現在、日本最長の一筆書きキップのルート在来線ルートを紹介することにしましょう。

考案したのは、一筆書きキップの権威といわれる東京町田市の眼科医、光畑茂さんです。

スタートは北海道稚内駅、ゴールは長崎の肥前山口駅です。

紙面の都合上、すべてのルートを紹介することができないのは残念だが、たとえば稚内駅をスタートして、海峡線の中小国駅に至る北海道ルートだけでも紹介すると、以下のようになります。

ちなみに、このキップの料金は約10万円。

有効日数は57日。

といっても、実際にこのキップを使って旅行するのは、よほどのヒマとお金のある人だろうキップを作らされる駅員もたいへんだが。

やはり、こうした一筆書きキップの旅は、時刻表の上だけの旅にしておいたほうがよさそうです。

いわゆる乗りつぶしです。

じつは乗りつぶしの定義は少々ややこしく、詳しくはあとで説明することにするが、ここでは、そんな乗りつぶしの歴史についてちょっとふりかえってみたい。

以来、達成者はどんどん増え、1980年8月には80人にものぼっていたのです。

こうした背景のもと、1980年3月、当時の国鉄が始めたのが、チャレンジ2万キロというキャンペーンだったのです。

2万キロという距離は、当時の国鉄路線が2万822.9キロ。

東海道山陽新幹線も含めると2万202l.1キロあったことに由来しています。

さて、このキャンペーン、国鉄がJRに分割されてからも引き継がれ、終了したのは10年後の1990年3月だったのです。

達成したのは1500人以上といわれ、国鉄JRは、総裁賞などの記念品を贈ってその栄誉営業収入アップに貢献したから?

をたたえることになったのです。

一説によると、JRに申請することもなく、ひそかに乗りつぶしを達成した人も少なからずいて、達成者の数は3000人以上いるともいわれるが、ともかく、こうして乗りつぶしは、全国的に認知されることになったのです。

一般には、JRと私鉄の鉄道すべての路線貨物専用をのぞく旅客営業の路線に乗車すればいいと思われているようだが、じつはこの鉄道の定義がむずかしいのです。

鉄道の定義について、よく引き合いに出されるのが、運輸省の出している『民鉄要覧』です。

ここには、JRや私鉄はもちろん、地下鉄や路面電車、ケーブルカー、明確な軌道があるモノレールや〈ゆりかもめ〉などの新交通システムも含まれています。

まあ、この程度なら時刻表にも載っており、なんとかなりそうだが、『民鉄要覧』に掲載されている鉄道はこれだけではないのです。

トロリーバスやロープウエー、さらにはスキー場のリフトまで載っています。

リフトは特殊索道といって、広い意味では鉄道の仲間だったのです。

日本のスキー場では現在、約3000本のリフトが稼働しているといわれるが、『民鉄要覧』に掲載されている鉄道すべてに乗ろうと思えば、3000本のリフトすべてに乗らなければならないことになります。

リフトの下りは原則として乗車禁止だから、こうなるとスキーのできない人は、リフトを上ったはいいが降りられないということになります。

つまり、スキーのできない人は、事実上、乗りつぶしができないということになってしまうのです。

誰もケチをつけることはできないでしょう。

けっきょく、乗りつぶしは、自分なりのルールを作り、そのルールを忠実に守りながら達成するところに喜びがあるということなのです。